今までも避けたほうがよい手術について触れてきましたが、今回は筋肉が原因になっているにも関わらず筋肉そっちのけで手術を勧められる症状と、仮にその手術をした場合どのようなリスクがあるのかについて書きます。
避けたほうが良い手術
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアになるメカニズムについては、すでに別の記事で詳しく書いたように筋肉の筋拘縮が原因になっている可能性があります。
椎間板ヘルニアの手術には大きく分けて2つあります。
飛び出した椎間板を取り除く「除圧術」と、脊椎を固定する「固定術」です。
除圧術にもいくつか方法があり、背中側から腰椎の一部を削り取り、神経の横からヘルニアを摘出する方法や顕微鏡や内視鏡を使って手術する方法などがあります。
固定術の場合は、金属のスクリューを利用して脊椎を固定します。除圧術は、手術をすることによって逆に神経を傷つけるリスクがあり、仮に神経を傷つけてしまうと車椅子生活を余儀無くされる可能性もあります。
また固定術の場合は、脊椎を固定してしまうことになるので本来動ける箇所が動けなくなってしまいます。固定されている脊椎とされていない脊椎の境目に大きな負担がかかってしまい、逆にその近辺の組織を傷つけてしまうことがあるのです。いずれの術法も、椎間板ヘルニアの原因となっている筋肉には全くアプローチしていませんので、痛みが改善しない、もしくは再発する可能性が高いにも関わらず、手術のリスクを背負わなければいけません。
肩関節周囲炎(五十肩・四十肩)
五十肩・四十肩になったことがある方はお分かりだと思いますが、五十肩や四十肩になった時は肩周りの筋肉がカチカチに硬くなっていたはずです。なぜそのように一斉に肩周りの筋肉だけ硬くなるのかは、私たちもまだ原因を研究している段階ですが、ドクターも原因が分からないまま手術しているのが現状です。原因がはっきり分からないまま手術をするため、痛みがなくなるかは運頼みな上にリハビリが不十分だと症状が悪化するケースもあるようです。
ちなみに最近よく耳にする「モヤモヤ血管」ですが、五十肩や四十肩の方にもこのモヤモヤ血管が発症していることが多く、このモヤモヤ血管が五十肩・四十肩の痛みの原因だと言われるようになりました。このモヤモヤ血管を治療するために、カテーテルを利用して治療薬を投薬するのですが、そもそも私たちはモヤモヤ血管は痛みの原因ではなく結果だと考えています。
硬くなってしまっている筋肉は、力を入れている状態の筋肉と全く同じで、硬く、太くなっています。このように常時硬くて太くなっている筋肉が増えると毛細血管を圧迫して血液が悪くなります。この血流の悪さが酸素不足を引き起こし、痛みを発生させているのですが、この状態をなんとかしようと体は新たに血の流れる場所を作ろうとし始めます。
硬くなった筋肉の周りにモヤモヤ血管がたくさんあるのはそのためです。
モヤモヤ血管がある箇所は硬い筋肉がたくさんありますので、その近辺を押すと痛み(圧痛)を感じますが、モヤモヤ血管そのものが痛みの原因ではないので、モヤモヤ血管にいくらアプローチしても、痛みの大元の原因になっている筋肉の硬さ(筋拘縮)をなんとかしない限りは、根本的な改善にはならないのです。
変形性股関節症
変形性股関節症になるメカニズムについては、すでに別の記事で書いていますので、そちらをご覧いただくとして、変形性股関節症もほぼ全てのケースで筋肉の筋拘縮とテコの原理が原因で発症しています。
大腿骨の骨頭が潰れて、臼蓋も変形してしまっている末期には手術が必要ですが、骨頭も潰れておらず、骨と骨の隙間が狭い状態の進行期であれば、手術は必要ありません。
なぜ筋肉が硬くなると、大腿骨骨頭と臼蓋の間が潰れるような力が加わるのかについても変形性股関節症になるメカニズムの説明記事で詳しく触れていますので、こちらでは説明を省きますが、人工関節を入れ替える手術をしても、骨頭と臼蓋を押しつぶす負荷はなくなっていませんので、術後も痛みが取れない、もしくは再発する可能性があります。それどころか、手術をしても骨頭と臼蓋に負荷が掛かり続けている状態ですので、人工関節を入れて4〜5年経つと、生体と金属の間に緩みが出ることがあります。
変形性膝関節症
変形性膝関節症も基本的には変形性股関節症と同じです。骨だけが原因ではありませんので、膝の関節に負荷をかけ続けている原因を解決しない限りは、人工関節と生体とのつなぎ目に力がかかり人工関節が緩んでしまったり、脱臼してしまったりするリスクがあります。
脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症も椎間板ヘルニアの固定術と同じで、脊椎を固める手術をした場合は、固定した箇所以外に負担がかかり、そこをかばうために手術した周りも硬くなって痛みがさらに悪化するケースがあります。
脊柱管狭窄症の方は前かがみになると楽になる方が多いですが、これは腰を反らすと痛みが出る腰痛と全く同じ状態です。体を反らすと伸ばされる筋肉が硬くなって伸びなくなってしまっているので、無理に背筋を伸ばそうとすると痛みや痺れが出るのです。この場合も、原因となっている硬く縮んだまま伸びない筋肉を改善しない限りは、手術をしても痛みが消えなかったり、逆に背筋を伸ばすような状態で固定しますので、余計に痛みや痺れが悪化することもあるのです。
なぜ、不要な施術を勧めてしまうのか
冒頭でも書きましたが、今回ご紹介した症状の全ては筋肉が原因になっているものです。
それにも関わらず、なぜ筋肉の改善ではなく、骨や椎間板などの手術ばかり勧められるのでしょうか。
これには事情があります。
今の技術では、筋肉が本来の状態よりも硬くなっているかどうかを診断できる機械がないのです。医療の現場ではMRIやCTなど画像に映るものをベースに診断するしかないわけです。筋肉が本来の状態よりも硬くなっているかどうかを判断するには今のところ、触診しか方法がありません。
逆に触診をするドクターは、筋肉のことを考えているドクターということになりますので、むやみやたらに手術は勧めてこないはずです。
いかがでしたでしょうか。骨など画像に映るものに関してはどんどん研究が進んでいますが、筋肉については一昔前からあまり進歩していないことが見えてきたのではないでしょうか。もし、今回紹介した不要な手術を勧められている方がいらっしゃいましたら、手術を避けることができるかもしれませんので、ぜひ一度私たちの施術を受けてみてください。