前回の記事で、「痛み止め」が、どのような作用によって痛みを感じなくするかを説明させていただきました。今回は「痛み止めの本質的役割と、腰痛の根本的改善とは」についてお話したいと思います。
痛み止めは根本的解決になるのか?
「痛み止めを飲んで痛くなくなったから、もう治った!」という方を何人も見たことがあります。しかしながら、ほとんどの人が「痛み止め」の効果が切れてしまうと痛みが再発してしまいます。前回の記事でもお話をしましたが、「痛み止め」には、組織の損傷、慢性的な酸素不足などによって炎症が引き起こされ、その際に生成されるはずのプロスタグランジンを生成出来なくさせる働きがあります。
プロスタグランジンは痛みの原因になるので、その生成を抑えることで痛みを感じなくなります。何も知識がないと「痛みがなくなった!治った!」と感じてしまうのも無理がありません。しかし、「痛み止め」の効果が切れてくると、また痛みが再発してしまうということは、果たして根本的に改善されたと言えるのでしょうか?
確かに「痛み止め」の効果が効いている間に炎症が落ち着き、プロスタグランジンが生成されなくなれば結果的には痛みはなくなります。しかしながら、それはあくまで炎症が治まっただけであり、「痛み止め」が根本原因を治した訳ではないのです。
ここで、ぎっくり腰を例に出したいと思います。
ぎっくり腰は腰の筋肉の炎症が激痛を引き起こします。この時、「痛み止め」を飲む人が多いのではないでしょうか。炎症は3~4日で落ち着いてくるので、痛みの原因物質が生成されなくなり、痛みはなくなります。
「痛み止め」がなくても痛みを感じなくなったので、もう完全に治ったと思うかもしれませんが、多くの人がぎっくり腰を再発しています。何故でしょうか?
その理由は明確で、「何故炎症が起きてしまったのか?が抜け落ちて、その根本原因を改善していないから」です。
「痛み止め」のお薬で腰痛の原因は悪化する?
このような書き方をすると、「痛み止め」自体が腰痛の原因を悪化させるように取られるかもしれませんが、そうではありません。あくまで「痛み止め」はプロスタグランジンの生成を抑えるもので、それ以外の何者でもありません。
しかし、別の視点で皆さんに考えて欲しいことがあります。そもそも「痛み」とは何の為にあるのでしょうか?「痛み」とは嫌な存在ですよね?不快に感じますよね?痛いと動きたくなくなって、じっとしたくなりますよね?そう、「痛み」とは体のどこかで異常が起きていることを知らせる「危険信号」であると同時に、負荷をかける行動を抑制する「防御反応」の役割を担っているのです。
つまり、ぎっくり腰でちょっとでも動こうとすると痛みを感じてしまう理由は、そこに負担をかけたら危険ですよ!というお知らせをしてくれているのです。怪我をした野生の動物を想像してみてください。彼らはその怪我が治るまでどうしているでしょうか?怪我の痛みを押し殺して、無理をして動くでしょうか?いえいえ、野生の動物は怪我が治るまで、じっと動かずにしてますよね。怪我が完全に治りきっていない状態で動くことは危険だと、彼らは本能でわかっているのです。
しかし、私たち人間は本能より理性で動いてしまうことがあります。痛みが危険信号ということを忘れて「痛み止め」で治ったと勘違いして、体を無理に動かしてしまうのです。「痛み」を感じなくなっても、体の中での炎症や慢性的な酸素不足は改善されることはなく、むしろその箇所に更なる負担をかけてしまい、余計に悪化させてしまう可能性があります。その結果、炎症が長く残ってしまったり、腰痛やギックリ腰の原因である筋肉を余計に硬くさせてしまったりと、知らない間に原因を悪化させているのです。
大切なことは、「痛み止めは原因を治しているわけでなく、痛みを隠しているだけで、体の中での危険信号は出続けている。その状態で体に負担をかければ、更に状態が悪くなってしまう」ということです。
本当に改善したといえるのはどんな状態
これまでの「痛み止め」の本当の役割についてお伝えしたことで、「痛み止め」では腰痛の根本的な改善にならないことをご理解いただけたかと思います。
根本的に改善するとは、痛みの出た箇所に捉われるのではなく、その痛みを引き起こしてしまった原因をしっかり改善する必要があるということです。
ここでは腰痛の原因についての詳しい説明はしませんが、何度もギックリ腰になった経験がある方、慢性の腰痛に悩まされている方の中で「痛み止め」を使用し、普通の生活を送られている方は、実は本当の原因から目を背け、更に痛みの原因を悪化させている恐れがあります。ぜひ、この機会に「痛み止め」との本当の向き合い方を知っていただければと思います。